私たち 有限会社 漂流岡山 は、岡山県産の果物や野菜をインターネットでの販売と地元岡山県内のスーパーマーケットに卸している会社です。

 

 最初は15年前にインターネットの果物店『岡山果物カタログ』を始めました。 ごくごく思いつきで『お客様が求める味優先の果物を、産地から直接お届けしたら商売になるんじゃないか?』と気楽に始めたこの会社。しかし始めてみるとひしひしと感じたのは農業という産業自体の衰退と農産物流通の仕組みの限界。 『お客様本位』と言いながら中間流通の都合が大きく幅を利かせる構造的な問題。 岡山県を代表する特産品の白桃で言うなら『棚持ち優先』『荷扱い優先』『歩留まり優先』で熟すはるかに前の桃を『これでえぇんじゃ』と深く考えず(深く考えないようにして)に収穫・出荷する悪慣習。

 

 簡単に言えば、お客様に喜んでいただけるほど熟し、かつ輸送にも耐えれほどに熟した桃を収穫されるのではなく、爪楊枝も刺さらないほど硬くてぜんぜん熟していない桃をただただ中間流通の都合で出荷し続けている悪慣習に驚きました。ただ果物生産の現場を歩いてみると、こんな悪慣習に『こんなことしてていいのか?』と疑問を持っている生産者もいました。若手の生産者さんたちです。1年2年ならともかく、自分のこれからの長い生産者生命を考えたときにずっとお客様に愛され続けられるためには、ほんとうの『お客様本位』『お客様目線』を貫かなければ産地競争力を失い、将来的にはお客様に見捨てられると気付いている若手の生産者さんたちです。

 

 そんな生産者さんたちをひとりひとり探して、正しい果物を一緒になって作って、お客様のファンを少しづつ増やしているのが『岡山果物カタログ』です。総社の秋山さんや山下さん吉冨さんや中嶋さん、山陽町の行本さんや釣井さんや皿井さん、西隆寺の雪本さん、一宮の今井さん。『岡山果物カタログ』に出荷している生産者さんに若手が多いのはそのためです。果物つくりに仙人的な超絶技巧の達人・名人なんていません。いるとすれば現代の農業の先端技術で、木の様子を毎日うかがいながら、手を抜かず、そして何より最終的にその味を味わってもらうお客様の姿を真剣に思い描きながら果物つくりに励む、ある意味まじめな、ある意味愚直な生産者です。

 

 私たちはそんな生産者さんを探して、お客様の求める果物とは何かを一生懸命話し合って、時期がきたら収穫して、そしてひとつひとつ心をこめてお客様にお届けしています。そんな果物ショップを運営していると野菜の若手生産者さんからも『うちの野菜をインターネットで売ってくれませんか』と声がかかります。若手農家ではなかなか利益を出すことが難しいのは果物も野菜も同じ。

 なんとかしてあげたいのは山々だったのですが13年も14年も前の時期にはわざわざ岡山県産の野菜をインターネット販売しても、そんな多くのお客様に支持されるとは思えませんでした。 ところがしばらく経ったときに起こったのが中国産の毒餃子事件。『地元野菜を集めてほしい』と声がかかったのは岡山県内のスーパーマーケットでした。

 

 『安心・安全な地元産の野菜を売りたい』今で言う地産地消コーナーを作らないかとのお誘いです。

 

 農家さんも集まってきていたので悪い話ではないと思ったのですが、ただちょっと考えることがあって踏みとどまりました。その時期から雨後の筍のように各スーパーマーケットの店頭にでき始めた地場野菜コーナー、いわゆる地産地消コーナー。主に農家さんが朝収穫した野菜を農家さんが自分で袋詰めして自分でジャンコードを張って自分で店頭へ陳列して、そして夕方売れ残った野菜は自分で持ち帰って売れ残りのロスを自分で吸収するいわゆる消化仕入れのビジネススタイル。そんなモデルが一般的ですが、それで本当に出荷している生産者さんが儲かるんだろうか。

 年金貰ってる高齢の生産者が生きがい対策的に出荷するのならともかく、年金も貰っていない農家がその野菜販売の収入で事業化するのは難しいのではないか(その後いろんな地域で成功している直売所を見てきました。とても生産者さんが儲かって大成功している消化仕入の直売所もあります。ただ一般的なモデルとしては難しいのではないかと今でも思うのです)。

 そもそも『市場から仕入れた野菜は買取、地産地消は売れ残ったら持ち帰らせる』ってのは商売として馬鹿にされてるように感じました。 地場野菜をスーパーマーケットに出荷するにあたって方向性は決まりました。

 

 地産地消コーナーだからと言って規格も鮮度もばらばら、時期的に野菜があるときは山のようにあるけど無いときは何も無いのでお茶や雑穀米でも売って売り場をごまかす、そんな売り場にはしない。 そのかわりスーパーマーケットには市場から仕入れるように買い取ってもらう。年金貰ってる高齢農家の生きがい対策ではなく、若手農家の持続的な農業の下支えにはそれしかない。

 

最初に私たちと地産地消コーナーを始めたのはイオンさんでした。もちろん買取です。

 

 その後地元のドミナント型スーパーマーケットのハローズさんも加わって今に至ります。 農家さんを開拓して収穫された野菜は裸のままで買い取って弊社作業場で商品化、鮮度も規格も一定で旬を感じて個性豊かな地場野菜はお客様にとても支持されてます。

 

 そして最近では改めて『岡山果物カタログ』で培ったネット販売のノウハウと、生産者の顔が見える新鮮野菜が豊富に揃ってきた品揃えを生かしてインターネットの岡山県産野菜ショップ『岡山野菜カタログ』を充実させています。 『有限会社 漂流岡山』はそんなことを事業の柱にしている会社です。